こんにちは。お米を育てる音楽家、ジョーです。
今回はクラリネットの運指について考えてみます。
記事の後半では、実際に曲でどのような運指を使ったら良いのか、一緒に考えてみましょう。
レ♭からシ♭の運指
以下の音、レ♭からシ♭の運指を考えてみましょう。

シ♭の運指は標準的な運指を使うこととします。
レ♭は左手の小指で取る方法と右手の小指で取る方法、2種類ありましたね。
それぞれ見てみましょう。
レ♭を左手で取る
まずはレ♭を左手の小指を使った場合の運指を考えてみましょう。

このような運指になります。
右手の小指でドのキーを押しても構いません。ただし、このキーは左手の小指のキーと連動しているので、左手の小指を押せば自動的にドのキーを押していることになります。
この運指が問題なくできれば一番いいのですが、実はこの運指にはちょっと難しいポイントがあります。
シ♭は左手の親指と人差し指を使う運指です。
そのことを考えて、レ♭からシ♭に移る際のそれぞれの左手の指の動きを見てみましょう。
左手を使ったレ♭からシ♭に移る際のそれぞれの左手の指の動きは
- 親指…レジスターと穴を押す→レジスターのみ押す
- 人差し指…穴を塞ぐ→ラのキーを押す
- 中指…穴を塞ぐ→離す
- 薬指…穴を塞ぐ→離す
- 小指… キーを押す→ 離す
というように、5本がフル稼働する運指になります。
薬指とか小指って、なかなか思うように動かないですよね。
中指・薬指・小指を同時に動かす、ここがちょっと難しいポイントです。
レ♭を右手で取る
次に、レ♭を右手の小指を使った場合の運指を考えてみましょう。

このような運指になります。
この場合、左手のそれぞれの指の動きは
- 親指…レジスターと穴を押す→レジスターのみ押す
- 人差し指…穴を塞ぐ→ラのキーを押す
- 中指…穴を塞ぐ→離す
- 薬指…穴を塞ぐ→離す
- 小指…離したまま
という動きになります。
左手の小指の動きがなくなり、4本の指が稼働することになります。
左手の小指の分は右手でやっている、ということです。
ほとんど同じですが、この小指1本の違いが大きな違いになります。
右手は…?
ところで、右手はどのような運指になるのでしょうか。
シ♭を吹きながら右手の指を動かして穴を塞いだりキーを押したりしてみてください。
多少の音色の変化やピッチの変化はありますが、だいたいはシ♭の音がしますね。
つまり、レ♭からシ♭に音が変わったとしても、右手はそのまま放置(押しっぱなし)で大丈夫です。
そう考えると、小指は右手で担当して置いたほうが楽ですよね!
もちろん上級者の方はシ♭ができるだけ良い音になる運指を使うことが望ましいです。
シ♭のよくなる運指についてはこちらの記事も合わせてご覧ください。
2019年度課題曲IIIを例に
それではレ♭→シ♭の例として、実際に曲を用いて見てみましょう。
2019年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲
III 行進曲「春」/福島弘和
クラリネット3rd、115小節目・116小節目の楽譜です。

小節をまたぐところにレ♭→シ♭という動きがあります。
この音だけに注目すると、たしかにレ♭は右手でとった方が良さそうです。
しかし次の116小節目を見てみると、シ♭→ド→レ♭→ミ♭→ファという音になっています。
ミ♭は右手で取るので、レ♭は左手、ドは右手でとる、ということになります。
そうなると、115小節目のレ♭は右手で取っても、116小節目のレ♭は左手で取る必要がでてきます。
R・Lを書き込むとこうなります。

113小節目からも見てみよう
さらに前、113小節目からも見てみましょう。

114小節目はファ→ソ→ラ→シ♭→ドという音になっています。
このシ♭→ドの時、ドは右手の小指で取ります。
ドを左手で取ることになると、シ♭→ドの時に、左手の小指も動かすことになり、上記で説明したような5本がフル稼働という状態になります。
そうなると、114小節目のドと115小節目のレ♭、どちらも右手の小指で取る必要がでてきます。(Rの連続)
タンギングするので、そのタイミングでピッと指を移し替えてもいいのですが、それはかなりリスクがあります。
115小節目のレ♭を右手でとりたいのであれば、114小節目のドを左手で取るのが無難でしょう。(Rの連続の回避)
となると、せっかく避けた114小節目のシ♭→ドで左手の小指が忙しい問題が起きてます。
R・Lを書き込むとこうなります。

うーん、全部はうまくいかないですね…。
結論
このメロディーの場合、レ♭は左手で取るのが良いでしょう。
R・Lを書き込むと以下のようになります。

ドは右手、レ♭は左手、とシンプルな運指になりました。
いろいろ考えてみましたが、まぁまぁありきたりな、標準的な運指になりましたね(笑)。
曲に合わせて運指を考えよう
今回の例では左手でレ♭を取る、という結論に至りました。
しかし、例えば以下の譜例の場合はどうでしょうか。

仮にレ♭を左手で取った場合、左手の小指がとても忙しくなります。
この場合はレ♭を右手で取った方が良いでしょう。
右手は押しっぱなしでOKです。
前後の繋がりから運指を考える
運指を考える際に、隣の音との繋がりを考えることはとても重要です。
しかしそれだけで終わらず、さらにその前後の繋がりも考えてみましょう。
全体として効率的に吹ける運指を、自分が吹きやすい運指を探してみてくださいね。
運指については以下の記事も合わせてご覧ください。
それではまた次回(^^)